和人がゆく、今日を往く
和人は歩く、山を歩く

海の上を歩く
夢の下を歩く

暗闇にこびりついた、光が泣いているようだった
夜虫の唄声と、ぶつかる虫の音に埋め尽くされて

りん、りん、と
こつ、こつ、と

和人がゆく、過去を征く

机の上を歩く
ゴミの下を歩く

錆びつた焼却炉の悲鳴が、茜色の空を巻いた
吸い込んだ記憶で、肺が埋め尽くされて

はら、はら、と
ひら、ひら、と

和人がゆく、明日を行く

人の海を渡り
人ゴミを泳ぐ

街に染み付いた、灰色の雑踏と
ぶつかる人の音に埋め尽くされて

そんな世界に背を向けて
誰もがイヤホンでふさいでいる

景色の声や、空の表情や
目の前を歩いている障害物や
虫の視線を、全て無視して
暗闇の朝を、ただ歩いていた

ふら、ふら、と
ばら、ばら、と

彼らはゆく、今日を往く

行きたくなくても
生きたくなくても

和人がゆく、秋(とき)を往く

ひら、ひら、と
こつ、こつ、と

ぼくらは見てほしかった
ただそれだけだったのだ

危急存亡の秋

作詞:DJ-Kowase

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